営業派遣で押さえるべき労働者派遣法|3年ルール・偽装請負・2026年10月改正を解説

営業人材を派遣で受け入れる際、派遣先である自社にも労働者派遣法上の義務と責任が発生します。「派遣会社に任せておけば大丈夫」と考えていると、期間制限(いわゆる3年ルール)への抵触や、偽装請負と判断されるリスクを見落としかねません。
本記事では、営業職の派遣を検討・活用している企業の営業責任者・人事担当者に向けて、労働者派遣法の基本、3年ルールの正しい理解、偽装請負を避けるためのポイント、そして2026年10月1日施行予定の法改正の内容を、厚生労働省等の公表資料に基づいて解説します。
なお、本記事は2026年7月時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の契約・運用の適法性を保証するものではありません。具体的な判断にあたっては、管轄の労働局や社会保険労務士・弁護士等の専門家に必ずご確認ください。
そもそも営業派遣の仕組みやメリット・デメリットから知りたい方は、まずこちらをご覧ください。
(営業派遣とは?仕組み・メリット・デメリットを企業向けに徹底解説)
営業職は派遣できる?労働者派遣法上の位置づけ
結論から言えば、営業職は労働者派遣が認められている業務です。
労働者派遣法では、港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関係業務の一部など、派遣が禁止されている業務(適用除外業務)が定められていますが、営業職はこれらに該当しません。テレアポやインサイドセールス、フィールドセールスといったBtoBの営業業務は、いずれも派遣スキームで受け入れることができます。
営業派遣とは、派遣会社(派遣元)が雇用する営業人材を、派遣先企業の指揮命令のもとで就業させる仕組みです。ここで重要なのは、雇用主は派遣会社のまま、業務上の指示を出す権限(指揮命令権)は派遣先企業にあるという点です。
この「指揮命令権が自社にある」ことは、営業派遣の最大の特徴であると同時に、後述する期間制限や派遣先としての義務が発生する根拠でもあります。逆に、指揮命令権が受託会社側にある業務委託(請負・準委任)契約とは法的な位置づけがまったく異なります。契約形態の違いは偽装請負の問題に直結するため、本記事の後半で詳しく解説します。
3年ルール(期間制限)の基本|事業所単位と個人単位

派遣の受け入れで最初に押さえるべきなのが、期間制限、いわゆる「3年ルール」です。2015年の労働者派遣法改正で導入されたもので、有期雇用の派遣社員の受け入れ期間には「事業所単位」と「個人単位」という2つの制限がかかります(出典: 厚生労働省「派遣で働く皆様へ(期間制限)」)。
事業所単位の期間制限
同一の派遣先事業所が派遣社員を受け入れられる期間は、原則3年が上限です。3年を超えて受け入れを継続したい場合は、派遣先事業所の過半数労働組合等からの意見聴取という手続きを経て延長することができます。
個人単位の期間制限
同一の派遣社員が、派遣先の同一の組織単位(いわゆる「課」レベル)で働ける期間も、原則3年が上限です。こちらは意見聴取による延長ができません。たとえば「営業部営業一課」で3年働いた派遣社員に、同じ課で引き続き働いてもらうことはできない、というのが基本的な考え方です。
2つの制限の関係(整理表)
| 事業所単位 | 個人単位 | |
|---|---|---|
| 制限の対象 | 派遣先の事業所全体での受け入れ期間 | 同一の派遣社員×同一の組織単位(課など) |
| 上限 | 原則3年 | 原則3年 |
| 延長の可否 | 過半数労働組合等への意見聴取で延長可 | 延長不可(組織単位を変えれば再度受け入れ可) |
無期雇用派遣は期間制限の対象外
見落とされがちな重要ポイントとして、派遣元(派遣会社)で無期雇用されている派遣社員は、この期間制限の対象外です。無期雇用派遣の営業人材であれば、3年を超えて同じ組織で受け入れを続けることが可能です(出典: 前掲・厚生労働省資料)。このほか、60歳以上の派遣社員なども期間制限の例外とされています。
営業は顧客との関係構築に時間がかかる職種であり、「3年で必ず入れ替わる」前提はビジネス上のリスクになり得ます。長期の活用を見込む場合は、契約前に派遣会社へ「無期雇用派遣のスタッフか、有期雇用か」を確認しておくことをおすすめします。
3年を超えて営業派遣を活用する方法
有期雇用の派遣社員について個人単位の3年が近づいた場合、派遣先企業が取り得る選択肢は主に次の3つです。
1. 無期雇用派遣の人材を活用する
前述のとおり、派遣元で無期雇用されている派遣社員は期間制限の対象外です。最初から長期活用を想定するなら、無期雇用派遣スタッフを擁する派遣会社を選ぶのが確実です。
2. 組織単位(課)を変更して受け入れる
個人単位の制限は「同一の組織単位」に対するものなので、別の課へ異動する形であれば同じ派遣社員を引き続き受け入れられる場合があります。ただし、実態を伴わない形式的な異動は法の趣旨に反すると判断されるおそれがあります。実施する場合は、業務内容や指揮命令系統が実際に変わることを確認し、事前に労働局や社労士等へ相談してください。
3. 直接雇用への切り替えを検討する
3年間の就業で自社の商材・顧客を熟知した営業人材であれば、直接雇用に切り替える価値は十分にあります。最初から直接雇用を視野に入れるなら、最長6か月の派遣期間を経て直接雇用に移行する「紹介予定派遣」という選択肢もあります。(紹介予定派遣で営業人材を採用するには)
派遣先企業の義務|受け入れ時に必要な対応
営業派遣の受け入れにあたり、派遣先企業には労働者派遣法上の義務が課されます。代表的なものを挙げます。
- 抵触日の通知: 派遣契約の締結にあたり、派遣先は事業所単位の期間制限に抵触する日(抵触日)を派遣元に通知する必要があります。
- 派遣先管理台帳の作成・保存: 派遣社員ごとに就業日・就業時間・従事した業務などを記録した派遣先管理台帳を作成し、保存する義務があります。
- 派遣先責任者の選任: 派遣社員の受け入れに関する管理を行う派遣先責任者を選任する必要があります。
- 指揮命令者の明確化: 誰が派遣社員に業務指示を出すのかを派遣契約で定め、現場でもその体制を守ることが求められます。
これらは「派遣会社側の仕事」ではなく、受け入れる側である派遣先自身の義務です。営業部門に派遣社員を迎える際は、人事部門と連携して受け入れ体制を整備しておきましょう。義務の詳細な要件は改正等で変わり得るため、最新の内容は厚生労働省の公表資料および管轄労働局でご確認ください。
偽装請負に注意|派遣と請負・準委任の分水嶺は「指揮命令権」

営業の外部活用で法的リスクが最も顕在化しやすいのが、偽装請負の問題です。
偽装請負とは
契約書の形式上は業務委託(請負・準委任)でありながら、実態として発注者が受託会社の労働者に直接指揮命令を行っている状態を指します。この場合、実態は労働者派遣であるにもかかわらず派遣法上の手続きを経ていないため、労働者派遣法違反と判断されるおそれがあります(出典: 厚生労働省・東京労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」)。
派遣と請負・準委任を分けるのは、指揮命令権の所在です。
| 労働者派遣 | 請負・準委任(業務委託) | |
|---|---|---|
| 指揮命令権 | 派遣先企業にある | 受託会社にある(発注者は直接指示できない) |
| 適用される主な法律 | 労働者派遣法 | 民法(請負・準委任) |
| 期間制限(3年ルール) | あり(無期雇用派遣等は例外) | なし |
営業分野での具体例
厚労省ガイドでは、発注者から受託者側への情報提供と「指揮命令」の線引きが示されています。営業分野に引き付けると、たとえば次のようなイメージです。
- 問題になりにくい例: 発注者が受託会社に対して、商談スケジュールや顧客に関する情報を「情報として提供」し、実際の営業活動の進め方は受託会社側の管理者が自社の労働者に指示する。
- 偽装請負と判断されるおそれのある例: 業務委託契約なのに、発注者が受託会社の営業担当者個人に対して、顧客への営業戦略やアプローチ方法まで直接・具体的に指示する。
つまり、業務委託契約で営業を外注している場合、「委託先の担当者に自社の営業メンバーと同じように細かく指示を出す」運用は危険だということです。日々の細かな指示・管理のもとで営業人材を動かしたいのであれば、業務委託ではなく、指揮命令が法的に認められている労働者派遣のスキームを選ぶのが筋の通った対応と言えます。
なお、実際の判断は契約書の文言ではなく就業実態に基づいて総合的に行われます。自社の運用が適正かどうか不安がある場合は、管轄の労働局や社労士等の専門家に確認してください。
業務委託(請負・準委任)契約側から見た法規制やリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。本記事(派遣法の視点)とあわせてお読みください。
【2026年10月施行予定】派遣法改正のポイント
派遣の実務担当者が今まさに押さえておくべきなのが、2026年10月1日施行予定の労働者派遣法施行規則・関係告示の改正です(出典: 日本人材派遣協会、厚生労働省)。
主なポイントは、同一労働同一賃金に関する説明義務の強化です。
- 「待遇差の説明を求めることができる旨」の明示義務の追加: 派遣社員の雇入れ時・派遣時に、派遣社員が待遇差の内容やその理由について説明を求めることができる旨を明示することが義務化される予定です。
- 同一労働同一賃金ガイドラインの明確化: あわせて、同一労働同一賃金ガイドラインの内容の明確化も実施される予定です。
明示義務を直接負うのは主に派遣元(派遣会社)ですが、待遇差の説明には派遣先の賃金水準や福利厚生の情報が関係するため、派遣先企業にも情報提供などの協力が求められる場面が想定されます。受け入れ中・受け入れ予定の派遣会社が2026年10月改正への対応を進めているか、契約更新のタイミングで確認しておくとよいでしょう。
また、2026年は派遣法改正以外にも、社会保険の適用拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃)やカスタマーハラスメント対策の義務化など、派遣実務に影響する制度変更が予定されています。派遣料金や受け入れ体制に影響し得るため、あわせて動向を追っておくことをおすすめします。
※本節の内容は2026年7月時点の公表情報に基づく「施行予定」の情報です。施行までに内容が変更・追加される可能性があるため、必ず厚生労働省の最新の公表資料をご確認ください。
営業派遣のコンプライアンスチェックリスト|発注前に確認する10項目
営業派遣の発注・受け入れの前に、最低限確認しておきたい項目を10個にまとめました。
1. 派遣会社は労働者派遣事業の許可を取得しているか(許可番号が「派○○-○○○○○○」の形式で開示されているか)。あわせて、厚生労働省の人材サービス総合サイトでマージン率などの法定開示情報も確認できる
2. 受け入れ予定の派遣社員は有期雇用か、無期雇用(期間制限の対象外)か
3. 自社事業所の「事業所単位の抵触日」を把握し、派遣元へ通知したか
4. 受け入れ先の組織単位(課)を明確にし、個人単位の3年を管理する体制があるか
5. 派遣契約書に業務内容・就業場所・指揮命令者が明記されているか
6. 派遣先責任者を選任したか
7. 派遣先管理台帳を作成・保存する運用が整っているか
8. 業務委託契約と派遣契約が混在していないか(委託先スタッフへの直接指示が起きない体制か)
9. 同一労働同一賃金対応(待遇情報の提供等)について派遣元と認識をすり合わせたか
10. 2026年10月施行予定の改正への対応方針を派遣会社に確認したか
すべて「はい」と答えられない項目があれば、契約前に派遣会社および労働局・社労士等の専門家へ確認することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 3年ルールを超えて同じ営業派遣スタッフに働いてもらう方法はありますか?
A. 派遣元で無期雇用されている派遣社員であれば期間制限の対象外です。有期雇用の場合は、組織単位の変更や直接雇用への切り替えが選択肢になります。詳細は本文「3年を超えて営業派遣を活用する方法」をご覧ください。
Q2. 業務委託の営業会社の担当者に、自社から直接指示を出してもよいですか?
A. 業務委託(請負・準委任)では、発注者が受託会社の労働者に直接・具体的な指揮命令を行うと偽装請負と判断されるおそれがあります。直接の指揮命令が必要な業務であれば、労働者派遣のスキームを検討してください。個別の判断は労働局・専門家への確認をおすすめします。
Q3. 2026年10月の派遣法改正で、派遣先企業がすべきことはありますか?
A. 明示義務を直接負うのは主に派遣元ですが、待遇差の説明には派遣先の情報が関わるため、派遣会社からの情報提供依頼等に協力が必要になる場面が想定されます。取引中の派遣会社の対応状況を確認しておきましょう。
まとめ|法令を守った営業派遣で、安心して営業力を強化する
本記事のポイントを整理します。
- 営業職は派遣が認められた業務。派遣では指揮命令権が派遣先(自社)にある
- 有期雇用の派遣社員には事業所単位・個人単位それぞれ原則3年の期間制限があり、無期雇用派遣は対象外
- 派遣先にも抵触日通知・派遣先管理台帳・派遣先責任者選任などの義務がある
- 業務委託で受託側スタッフに直接指示を出すと偽装請負のリスク。分水嶺は指揮命令権
- 2026年10月1日には待遇差説明に関する明示義務等の改正が施行予定
労働者派遣法は改正が続く分野であり、受け入れ企業側にも正確な知識とアップデートが求められます。本記事は一般的な解説であるため、個別具体的な判断については管轄の労働局や社会保険労務士・弁護士等へご確認ください。
法令に沿った営業派遣の受け入れなら、BCC株式会社(IT営業アウトソーシングカンパニー)へ
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派遣契約の設計から指揮命令体制・期間制限の管理、抵触日通知や派遣先管理台帳といった受け入れ側の実務まで、労働者派遣法に準拠した運用をご支援します。2026年10月施行予定の法改正についても、派遣先企業様に必要な情報を随時ご提供します。
「コンプライアンスに不安なく営業派遣を活用したい」「まずは進め方を知りたい」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
労働者派遣事業許可番号:派27-302361