営業派遣のデメリットとは?企業側が知るべき注意点と対策をセットで解説

営業の人手が足りない。採用を出しても応募が集まらない。そんなときに候補に挙がるのが営業派遣ですが、いざ検討を始めると「派遣で本当に営業が回るのか」「あとで困ることはないか」という不安が出てきます。実際、営業派遣には発注企業の側から見て無視できないデメリットがいくつかあります。この記事では、それらを隠さずに挙げたうえで、それぞれに「社内でできる対策」と「派遣会社選びで確認すべき点」をセットで整理します。読み終えるころには、自社にとってデメリットが大きいのか小さいのか、判断できる状態になるはずです。
営業派遣の仕組みをおさらいしてからデメリットを見る
デメリットの話に入る前に、前提を一つだけ揃えておきます。営業派遣は、派遣会社に雇用されたスタッフが、発注企業(派遣先)の指揮命令のもとで営業業務を行う形態です。雇用主は派遣会社、日々の業務指示は発注企業、という分かれ方をします。
この「指揮命令は自社で持つ」という点が、営業派遣の強みであり、同時にこの記事で挙げるデメリットの多くの出どころでもあります。自社の営業マネージャーが直接動かせるので、商材の説明の仕方や案件の優先順位を細かく調整できる一方、その分の管理責任と手間は自社に残ります。仕組みやメリット側の整理は営業派遣の仕組みとメリットをまとめた記事にあるので、そちらも参考にしてください。
ここからは、発注企業の立場で実際に困りやすい6つのデメリットを順に見ていきます。
デメリット1:期間制限があり、長期の体制づくりに制約がかかる

何が起きるか
労働者派遣法では、同じ派遣スタッフを同じ組織単位(課やグループなど)で受け入れられる期間は原則3年までと定められています。事業所単位でも原則3年の上限があり、延長には過半数労働組合などへの意見聴取が必要です。
営業の現場でこれが効いてくるのは、「ようやく商材とお客様を覚えて、担当アカウントを任せられるようになった」というタイミングです。IT商材はプロダクトの機能、ライセンス体系、競合との違いを理解するまでに時間がかかります。3年目に入ってようやく単独で商談を回せるようになった人が、期限で抜けてしまう。これは体制設計上の実害です。
対策と、派遣会社に確認すべき点
対策は3つあります。
一つ目は、無期雇用派遣の比率を確認することです。派遣会社と無期雇用契約を結んでいるスタッフは、個人単位の3年制限の対象外になります。自社採用の正社員を派遣する会社であれば、この点で長期の受け入れ設計がしやすくなります。
二つ目は、紹介予定派遣の活用です。一定期間(最長6か月)派遣で働いてもらったあと、双方合意のうえで直接雇用に切り替える仕組みです。「最終的には社員として長く担当してほしい」という枠であれば、最初から紹介予定派遣で組んでおく方が筋が通ります。
三つ目は、受け入れる組織単位の設計です。抵触日は組織単位ごとに数えるため、部署の切り方や配属の設計によって運用の幅が変わります。ただしこれは法の趣旨に沿った範囲で行うべきもので、実態のない配置換えは避けてください。
派遣会社に確認すべきなのは、「御社の営業派遣スタッフは有期雇用ですか、無期雇用ですか」「紹介予定派遣の実績はありますか」の2点です。答えが曖昧な会社は、長期戦力としては期待しにくいと考えてよいでしょう。
デメリット2:営業ノウハウが社内に残りにくい

何が起きるか
派遣スタッフが担当していた見込み客リスト、商談で効いたトーク、失注の理由。こうした情報がスタッフ個人の頭の中と手元のメモにしかない状態で契約が終わると、次の担当者はゼロから始めることになります。
特にインサイドセールスをまるごと派遣スタッフに任せているケースで起きがちです。架電のコツや、どの業種のどの役職に当たると反応がよいかといった「現場の勘」は、意識して残さない限り消えます。
対策と、派遣会社に確認すべき点
まず、SFA/CRMへの記録ルールを受け入れ初日から決めてください。活動履歴の入力粒度、商談ステージの定義、失注理由の選択肢。これらを自社社員と同じ基準で運用すれば、担当が変わっても情報は残ります。「派遣だから入力は簡易でいい」とすると、あとで一番困るのは自社です。
次に、トークスクリプトや切り返し集を共有ドキュメントとして育てること。派遣スタッフが見つけた効くフレーズを社員側が吸い上げ、逆に社員が持っている商材知識をスクリプトに落とす。双方向の更新を月1回でも回せば、ノウハウは属人化しません。
そして、社員との同席です。週に何件かでよいので、社員が派遣スタッフの商談に同席する、あるいはその逆をやる。これが最も確実にノウハウを社内に移す方法です。
派遣会社側には、「スタッフの活動記録や日報を発注企業と共有する運用があるか」を確認してください。フォロー担当者が定期的にスタッフと面談し、その内容を発注企業側にもフィードバックする会社であれば、ノウハウの流出は最小限に抑えられます。
デメリット3:人材の当たり外れと、立ち上がりの遅さ
何が起きるか
「来てもらったが、思ったより動けない」。営業派遣で最も多い不満はこれです。ただ、原因を分解すると、スタッフ個人の資質の問題より、教育の前提と立ち上げ設計の問題であることが少なくありません。
IT業界の営業は、扱う商材が無形で、かつ技術的な前提知識を要求されます。SaaSのライセンス形態、オンプレとクラウドの違い、SIerとエンドユーザーの商流。この基礎がない人がいきなり現場に入れば、動けないのは当然です。
対策と、派遣会社に確認すべき点
対策の第一は、派遣会社の教育体制を具体的に確認することです。「研修あり」の一言では判断できません。どのような内容を、どのくらいの期間、誰が教えているのか。IT商材の基礎を扱っているのか。自社雇用の社員に対して行う研修なのか、登録型スタッフ向けの簡易なものなのか。ここで差が出ます。
第二は、初期1〜2か月の立ち上げ設計を自社側で用意すること。商材のインプット期間、ロープレ、社員同席の商談、単独での初回架電、という段階を最初から引いておきます。派遣会社の教育で営業の基礎ができていても、自社商材の理解は現場でしか身につきません。この期間を「様子見」で過ごすと、立ち上がりはそのまま遅れます。
第三は、交代の仕組みです。相性や適性の問題は一定確率で起きます。その際に、派遣会社がどのような手順で交代に応じるのか、フォロー担当者が間に入って調整してくれるのか、事前に取り決めておくと安心です。
派遣会社選びの際は、「ミスマッチを防ぐプロセスが整っているか」「就業後のフォロー担当が誰で、どの頻度で状況を確認するのか」を聞いてください。この答えの解像度が、その会社の実力をかなり正確に表します。
デメリット4:指揮命令の責任と管理工数が自社に残る
何が起きるか
営業代行や業務委託と違い、営業派遣では発注企業が指揮命令者になります。つまり、労務管理の一部を自社が担うということです。
具体的には、派遣先責任者の選任、派遣先管理台帳の作成と保存、労働時間の管理、就業条件の整備などが求められます。営業職は外出や直行直帰が多く、労働時間の把握が曖昧になりやすい職種です。ここを放置すると、派遣会社との間で認識のずれが生じ、最悪の場合は法令違反として指摘を受けます。
対策と、派遣会社に確認すべき点
まず、管理者を明確に置くこと。派遣先責任者は形式的に人事部長の名前を入れておけばよい、という運用では機能しません。現場の営業マネージャーが日々の指揮命令と勤怠確認を行い、その上位者が派遣先責任者として派遣会社との窓口になる、という2層構造が現実的です。
次に、派遣会社のフォロー体制です。管理台帳の書式提供、抵触日の通知、法改正時の案内など、派遣会社側が発注企業の法令対応を支援してくれるかどうかで、社内の工数は大きく変わります。営業派遣に特化した会社ほど、営業職特有の勤怠や外出管理について実務的な助言ができるはずです。
派遣法上の義務の全体像は営業派遣に関わる派遣法のポイントを整理した記事で詳しく扱っています。管理工数がどの程度発生するかの見積もりに使ってください。
デメリット5:コストが直接採用より割高に見える
何が起きるか
営業派遣の料金は、スタッフに支払われる賃金に、派遣会社の教育費、社会保険料、フォロー体制の費用、利益が上乗せされた金額です。月額の請求書だけを見ると、直接雇用の給与より高く感じます。
さらに、単価は派遣会社によって幅があります。自社雇用で教育投資を厚くしている会社ほど単価は高めになる傾向があり、安い会社と比べると「なぜこんなに違うのか」と戸惑うかもしれません。
対策と、派遣会社に確認すべき点
対策は、比較の土俵を揃えることです。直接採用の場合、求人媒体費や人材紹介手数料、面接に割く管理職の時間、入社後の教育工数、戦力化するまでの数か月分の給与、そして早期離職した場合の再採用コストがかかります。これらを含めた総コストで、派遣の月額と比較してください。IT営業の採用難が続く現状では、採用費と立ち上がり期間の重さを見落とすと判断を誤ります。
派遣会社同士の比較には、法定の情報開示を使いましょう。派遣会社はマージン率や教育訓練の内容を公開する義務があります。マージン率が高い会社は、それだけ教育やフォローに投資している場合もあれば、単に利益が厚いだけの場合もある。教育訓練の項目と合わせて読めば、どちらなのか見えてきます。
見積もりを取る際は「この単価の内訳として、教育とフォローにどの程度の投資が含まれているか」を聞いてください。単価の高低そのものより、その説明が具体的かどうかが判断材料になります。
デメリット6:任せられない業務がある
何が起きるか
「営業を丸ごと任せて、成果だけ受け取りたい」。この期待で営業派遣を選ぶと、必ず食い違いが起きます。派遣は「人を借りて自社が指揮する」仕組みであり、成果責任を派遣会社が負う形にはできません。成果責任を外部に移したいなら、それは業務委託(営業代行)の領域です。
逆に、業務委託の契約で発注していながら、実態として自社が細かく指揮命令している場合は「偽装請負」に該当するおそれがあります。また、派遣で受け入れたスタッフを自社の顧客先にさらに派遣するような形は「二重派遣」として禁止されています。SES的な多重構造に慣れているIT業界では、この線引きを軽く見てしまうケースがあるので注意が必要です。
対策と、派遣会社に確認すべき点
対策は、派遣と委託の使い分けを最初に決めることです。自社で営業プロセスを設計・管理できるなら派遣、プロセスごと外に出して成果で買いたいなら委託。両者の違いと選び方は営業派遣と営業代行の違いを整理した記事で詳しく比較しているので、判断に迷う場合はそちらを先に読んでください。
派遣会社には、「派遣で対応できる業務範囲」と「できない依頼の例」を率直に聞いてみましょう。何でも引き受けると答える会社より、「それは派遣ではできません」とはっきり線を引く会社の方が、コンプライアンス面では信頼できます。
営業派遣のデメリットが大きいケース、小さいケース
ここまでの6つを踏まえて、自社にとってデメリットが重いのか軽いのかを判断する軸を整理します。
デメリットが大きくなりやすい企業
- 営業プロセスが未整備で、SFA/CRMも運用されていない(ノウハウが残らない・管理工数が読めない)
- 指揮命令を行う営業マネージャーが不在、または多忙で派遣スタッフを見られない
- 「成果報酬で売上を作ってほしい」という期待が強い(派遣の仕組みと合わない)
- 3年を超えて同じ人に担当を固定したいが、直接雇用に切り替える予定はない
デメリットが小さくなりやすい企業
- 営業マネージャーがいて、日々の指示と勤怠確認ができる体制がある
- 商材知識のインプット資料やトークスクリプトが存在し、立ち上げ期間を設計できる
- テレアポやリード対応など、業務が切り出されていて、社員はクロージングに集中したい
- 将来的な直接雇用も視野に入れており、紹介予定派遣や無期雇用派遣の選択肢を検討できる
大きいケースに当てはまる項目が多いなら、営業派遣の前に社内の営業プロセス整備を優先するか、業務委託を検討する方が結果的に早いことがあります。小さいケースが多いなら、営業派遣のデメリットは対策でほぼ吸収でき、採用難の中で人手を確保する手段として有力です。
よくある質問
Q. 営業派遣のスタッフに、テレアポからクロージングまで全部を任せることはできますか?
業務範囲としては可能ですが、指揮命令と成果責任は自社に残ります。「任せる」というより「自社の営業組織の一員として動かす」という前提で設計してください。成果責任ごと外に出したい場合は業務委託の検討になります。
Q. 3年の期間制限を超えて、同じスタッフに担当を続けてもらう方法はありますか?
派遣会社と無期雇用契約を結んでいるスタッフであれば、個人単位の期間制限は適用されません。また、紹介予定派遣を経て直接雇用に切り替える方法もあります。検討している派遣会社がどちらに対応しているか、最初に確認してください。
Q. 派遣スタッフの労働時間管理は、派遣会社がやってくれるのではないですか?
日々の労働時間の把握と指揮命令は派遣先(発注企業)の責任です。派遣会社は雇用主として賃金計算や社会保険を担いますが、現場での勤怠確認は自社で行う必要があります。営業職は外出が多いので、報告ルールを先に決めておくことが重要です。
Q. 単価が高い派遣会社と安い派遣会社、何を基準に選べばよいですか?
単価の差は、教育投資とフォロー体制の厚さで生まれることが多いです。法定開示されているマージン率と教育訓練の内容を並べて比較し、さらに立ち上がりまでの期間や交代時の対応まで含めた総コストで判断してください。金額だけで選ぶと、立ち上がりの遅さで結局高くつくことがあります。
まとめ
営業派遣には、期間制限、ノウハウの流出、人材のばらつきと立ち上がりの遅さ、管理工数、コストの見え方、任せられない業務の存在という6つのデメリットがあります。いずれも実在する制約で、軽く見るべきではありません。ただし、その多くは社内の受け入れ設計と派遣会社の選び方で小さくできます。無期雇用の比率、教育の中身、フォロー体制、法定開示の情報。この4点を派遣会社に確認し、自社側ではSFA/CRMの運用と立ち上げ期間の設計を用意する。この準備ができていれば、営業派遣は採用難の時代に営業体制を支える現実的な手段になります。デメリットが大きいと感じる項目が多い場合は、無理に派遣を選ばず、社内整備や業務委託も含めて検討してください。
BCC株式会社(IT営業アウトソーシングカンパニー)は、IT業界に特化した営業派遣サービスを提供しています。ご提案する人材はすべて自社採用のBCC社員で、独自開発の教育プログラム「BCC-LaPTプログラム」で営業スキルを習得したうえで現場に入ります。人材のご提案から受け入れ後のフォロー、法令対応まで一貫してサポート。「派遣のデメリットが自社に当てはまるか相談したい」「まずは進め方を知りたい」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。