インサイドセールス人材を派遣で確保するには?外注・内製との違いと活用ポイント

リード獲得の数はある程度読めるようになったのに、その先の架電やメールでのフォローに回す人がいない。フィールドセールスが合間に電話をかけている状態で、商談化率が伸びない。そんな課題に対して「インサイドセールスの担当者を派遣で確保する」という選択肢を検討している方に向けた記事です。
インサイドセールスの役割や立ち上げ手順そのものは、IT業界のインサイドセールスとはやインサイドセールスの立ち上げ方で解説しています。本記事はそこから一歩進めて、「派遣という形で人を確保する」ときの実務に絞ります。派遣・代行(業務委託)・内製の使い分け、派遣会社に伝えるべき要件、受け入れ側の準備、派遣スタッフのKPIとフィードバックの持ち方、そしてIT商材ならではの難所まで、発注側の目線でまとめました。
インサイドセールスの人員確保は「派遣・代行・内製」の3択で考える

インサイドセールスの担当者を増やす方法は、大きく3つです。自社で採用して育てる「内製」、業務ごと外部の会社に任せる「代行(業務委託)」、そして派遣会社と労働者派遣契約を結び、自社の指揮命令のもとで働いてもらう「派遣」。
この3つは「人が来る」という点では似ていますが、契約の性質がまったく違います。とくに派遣と代行は混同されやすく、ここを取り違えると「自社のSFAに入力してほしいのに、代行会社のツールでしか報告が上がってこない」「トークを変えてほしいのに、契約変更が必要と言われた」といったズレが起きます。営業派遣の仕組みそのものは営業派遣とはで整理しているので、ここでは4つの軸で3択を比べます。
指揮命令:誰が日々の業務指示を出すか
派遣は、派遣先である自社の担当者が業務の指示を出します。「今日はこのリストの上から順に」「このセグメントは一度止めて別の訴求で」といった日々の指示を、自社の管理者がそのまま出せるのが派遣の特徴です。
代行(業務委託)は逆で、発注者が受託先のスタッフに直接指示を出すことはできません。指示は受託会社の責任者を通す形になり、細かい変更のたびに調整が要ります。内製は当然ながら自社で指示を出しますが、その人を採用し、育て、雇い続ける責任も自社に残ります。
ノウハウの蓄積先:トークや失注理由がどこに残るか
インサイドセールスは、架電のたびに「この業種はこの切り口だと反応がいい」「この断り文句にはこう返すと次につながる」といった知見が溜まっていく仕事です。
派遣であれば、その知見は自社のSFAやスクリプトに残ります。派遣スタッフが交代しても、コールログとトークの改訂履歴が社内に残るからです。代行の場合、ノウハウは基本的に受託会社側に蓄積され、契約終了とともに手元から離れます。レポートとして受け取れる範囲は契約次第です。
立ち上がり速度:最初の架電までにかかる時間
もっとも早いのは代行です。すでに体制とスクリプトの型を持っている会社なら、商材のインプットが済めば動き出せます。派遣はその次で、人材の提案から受け入れ準備、契約締結を経て稼働に入ります。内製は採用から始めるため、募集・選考・入社・育成を含めると数か月単位を見込む必要があります。
ただし派遣の「立ち上がり」には注意点があります。派遣スタッフが即日フル稼働できるかどうかは、受け入れ側にスクリプトとリストがあるかで大きく変わります。この点は後述します。
リスト・顧客情報の扱い:データが社外に出るか
派遣スタッフは自社のオフィス(またはリモート環境)で、自社のツールにログインして業務を行います。リストや顧客情報は社外に出ず、アクセス権限も自社で管理できます。守秘義務は派遣元との契約と派遣スタッフ本人への誓約で担保するのが一般的です。
代行では、少なくともリストを受託会社に渡すことになります。IT商材で既存顧客へのアップセル架電を任せるなら、契約情報や利用状況といった情報を社外に預けることになるため、情報管理の取り決めが重くなります。
| 比較軸 | 派遣 | 代行(業務委託) | 内製 |
|---|---|---|---|
| 日々の業務指示 | 自社の管理者が直接出す | 受託会社の責任者を通す | 自社 |
| ノウハウの蓄積先 | 自社のSFA・スクリプト | 受託会社(レポート範囲は契約次第) | 自社 |
| 立ち上がり速度 | 中(受け入れ準備の有無で変動) | 速い | 遅い(採用から) |
| リスト・顧客情報 | 社外に出ない | 受託会社に預ける | 社外に出ない |
代行との違いを契約面から詳しく知りたい場合は営業派遣と営業代行の違いを、代行会社の比較そのものはインサイドセールス代行の比較を参照してください。
派遣が向くケース
3択の中で派遣が向くのは、「業務は外の人に担ってもらいたいが、運用の主導権は手放したくない」場合です。具体的には次の3つが典型です。
自社のSFA・MAで運用を完結させたい
SalesforceやHubSpotなどのSFA・MAをすでに導入していて、リードのスコアリングから架電結果の入力、商談化の受け渡しまでを一つのシステムで回したい場合、派遣が向いています。派遣スタッフは自社のアカウントで自社のツールに入力するため、「代行会社のスプレッドシートを週次で取り込む」といった二重管理が発生しません。
ダッシュボードの設計も自社の指標で組めます。架電数、接続率、商談化率を部門のKPIツリーにそのまま載せられるのは、運用面で地味に効きます。
トークスクリプトを自社で改善し続けたい
IT商材のインサイドセールスは、スクリプトが固定で済むことはほとんどありません。新機能のリリース、競合の値下げ、業界の法改正など、訴求を変える理由が次々に出てきます。
派遣なら「来週からこの切り口に変えて」と管理者がその場で指示できます。改善の検証サイクルを週単位、場合によっては日単位で回せるのは、指揮命令が自社にあるからこそです。
フィールドセールスとの分業を社内で完結させたい
商談化したリードをフィールドセールスに引き継ぐとき、社内にインサイドセールスがいれば、引き継ぎメモの書き方や商談前の情報共有を同じ会議で詰められます。「架電で聞いた課題感がフィールドに伝わっていない」という典型的なロスは、両者が同じチャットや朝会に参加しているだけでかなり減ります。
代行では引き継ぎが会社をまたぐため、どうしても定型化された情報だけになりがちです。分業の精度を上げたいなら、派遣で社内に置く方が扱いやすいでしょう。
派遣会社に伝える要件
派遣会社に「インサイドセールスをやれる人を」とだけ伝えると、提案される人材の幅が広くなりすぎます。次の5点を最初の相談時に整理して伝えると、提案の精度が上がります。
架電の対象と商材
新規リードへのアプローチなのか、休眠顧客の掘り起こしなのか、既存顧客へのアップセル・更新案内なのかで、求められる動き方は変わります。あわせて商材の種類(クラウドサービス、ネットワーク機器、セキュリティ製品、SESなど)と、相手先の部門(情報システム部門か、事業部門か、経営層か)も伝えておきます。
「ITに詳しい経験者」を要件にするより、「情シス向けのセキュリティ製品で、資料請求リードへの初回架電と商談設定まで」と具体化した方が、派遣会社側も適切な人材を選びやすくなります。
KPI・使用ツール・稼働時間
想定するKPI(1日の架電数、接続率、商談化数など)、使用ツール(SFA・MA・CTI・ビジネスチャット)、稼働時間(平日の日中か、時差のある海外拠点対応があるか)も要件に含めます。ツールは「使ったことがあるか」より「入社後に習得できる教育があるか」を派遣会社に確認しておくと安心です。
また、稼働日数と時間帯は派遣契約の「就業条件」に直結します。最初に決めた条件から後で変更する場合、契約の見直しが必要になるため、繁忙期の増員可能性なども含めて伝えておきましょう。
派遣会社の選び方全般は営業派遣会社の選び方で扱っています。
受け入れ側で用意しておくもの
派遣で確保したインサイドセールスが初日から動けるかどうかは、受け入れ側の準備で決まります。準備が薄いと、派遣スタッフの最初の数週間が「何をかければいいのか分からない」時間になってしまいます。
トークスクリプトと切り返し集
スクリプトは完成形でなくて構いません。オープニング、ヒアリング項目、商談設定の打診、よくある断り文句への切り返し、この4点が1枚にまとまっていれば十分です。派遣スタッフが実際にかけながら改訂していくのが前提なので、「たたき台」として渡し、週1回の見直しを予定に入れておきます。
スクリプトがまったくない場合は、稼働開始前の1〜2週間を「フィールドセールスの同席・商談動画の視聴・スクリプト作成」に充てる想定で計画すると、無理がありません。
リード供給の仕組み
派遣スタッフの1日分の架電数に対して、リストが足りているかを確認します。MAから毎日流れてくるのか、展示会の名刺リストを月初にまとめて渡すのか、あるいは休眠リストを一括で渡すのか。供給が途切れると、派遣スタッフの稼働時間が余ってしまいます。
指揮命令者(管理者)の設置
派遣では自社の担当者が業務指示を出します。誰がその役割を担うのかを決め、日次の確認(朝の方針共有と夕方の結果確認)を回す時間を確保しておきます。フィールドセールスのマネージャーが兼務することが多いですが、その人が外出続きで指示が滞ると、派遣スタッフは動きようがありません。
派遣法上、派遣先には派遣先責任者の選任と派遣先管理台帳の作成が求められます。実務の管理者と法定の派遣先責任者は同一人物でなくても構いませんが、どちらも決めておく必要があります。法令面の詳細は営業派遣に関わる派遣法のポイントを参照してください。
KPIの持ち方と派遣スタッフへのフィードバック

派遣スタッフに対して「どこまで評価していいのか」は、受け入れ側がもっとも迷う点です。
人事評価はしない。業務の指示とフィードバックはする
派遣スタッフの雇用主は派遣会社です。賃金の決定や昇給・昇格といった人事評価は派遣会社が行い、派遣先である自社が直接評価を下すことはありません。一方で、業務の指示、日々の結果に対するフィードバック、トークの改善指導は派遣先が行うものです。「評価はしないが、指導はする」と整理しておくと分かりやすいでしょう。
なお、派遣先には、派遣会社が派遣スタッフを適正に評価できるよう、業務の遂行状況などの情報提供に協力する努力義務があります(労働者派遣法第40条第5項)。月次で派遣会社の担当者と共有する場を設け、架電数や商談化数、取り組み姿勢などを伝えておくと、派遣会社側の育成や配置にも反映されます。
KPIは「量」と「質」を分けて持つ
インサイドセールスのKPIは、架電数や接続数のような活動量の指標と、商談化率や商談後の受注率のような質の指標に分けて持ちます。派遣スタッフに伝えるのは主に活動量と商談化数で、受注率まで責任を負わせるのは適切ではありません。受注はフィールドセールスの動きに左右されるからです。
数値だけでなく、コールログの内容を週次でサンプリングし、「ヒアリング項目が抜けていないか」「次回アクションが明記されているか」を見ると、量の指標だけでは拾えない改善点が見えてきます。
IT商材のインサイドセールスで詰まりやすいポイント
ネットワーク、クラウド、セキュリティといったIT商材のインサイドセールスには、他業界にはない難所があります。派遣スタッフを受け入れる前に、社内でどこまで補えるか確認しておきたい点です。
商材の理解に時間がかかる
「SASEとは何か」「オンプレからクラウドへ移行するときの一般的な懸念は何か」といった前提知識がないと、情シス担当者との会話が続きません。派遣会社側の教育でIT業界の基礎を押さえていても、自社商材の具体は受け入れ側で教える必要があります。営業資料と製品のFAQ、フィールドセールスが商談で使っている説明を最初の週にインプットする計画を立てておきます。
相手が「技術的な質問」を投げてくる
情シス部門への架電では、「既存のファイアウォールとの併用はできるか」「ライセンスは端末単位か」といった質問がその場で来ます。派遣スタッフが即答できる必要はありませんが、「技術的なご質問は担当エンジニアから折り返す」と引き取り、社内の誰に回すかが決まっていることが重要です。この引き取り先の設計が抜けていると、架電のたびに回答が止まります。
検討期間が長く、KPIが短期で動かない
セキュリティやネットワーク製品は、予算化から導入まで半年以上かかることも珍しくありません。今月の架電が商談になるのは3か月後、ということが普通に起きます。この前提を管理者と派遣スタッフの双方が理解していないと、「成果が出ていない」と早合点して施策を変えすぎてしまいます。活動量の指標で稼働を見て、商談化は四半期単位で評価する、といった時間軸の設計が要ります。
よくある質問
Q. インサイドセールス経験者を派遣してもらえますか。
派遣会社によって人材の構成は異なります。経験者を中心に提案する会社もあれば、自社で採用した人材を教育してから派遣する会社もあります。IT商材の場合、前職の経験より「業界の基礎を体系的に学んでいるか」「受け入れ後のフォロー体制があるか」の方が、立ち上がりに影響することが少なくありません。派遣会社にどのような教育を行っているかを確認してください。
Q. 派遣スタッフに自社のSFAを使ってもらうことはできますか。
できます。派遣スタッフは自社の指揮命令のもとで業務を行うため、自社のツールへの入力を業務として指示できます。アカウントの発行と、アクセス権限の範囲は受け入れ前に社内で決めておきましょう。
Q. 同じ派遣スタッフに長く担当してもらえますか。
労働者派遣法では、同じ事業所で派遣を受け入れられる期間に原則3年の上限があります(事業所単位・個人単位の期間制限)。延長には過半数労働組合等への意見聴取が必要です。長期での運用を前提にする場合は、契約前に派遣会社と期間制限の扱いを確認してください。
Q. 費用はどのくらいかかりますか。
派遣の単価は、人材のレベルや派遣会社の教育体制によって幅があります。教育投資が厚い会社ほど単価は高い傾向にあるため、個別に見積もりを取って比較してください。詳しくは営業派遣の費用で解説しています。
まとめ
インサイドセールスの人員確保は、派遣・代行・内製のどれを選ぶかで、指揮命令の所在、ノウハウの蓄積先、立ち上がり速度、顧客情報の扱いが変わります。自社のSFA・MAで運用を完結させたい、トークを自社で改善し続けたい、フィールドセールスとの分業を社内で詰めたい、という場合は派遣が向いています。派遣会社には架電対象・商材・KPI・ツール・稼働時間を具体的に伝え、受け入れ側ではスクリプトのたたき台、リード供給、指揮命令者の設置を整えておきましょう。派遣スタッフの人事評価は派遣会社が行いますが、業務の指示とフィードバックは受け入れ側の役割です。IT商材では商材理解、技術的な質問の引き取り先、長い検討期間という難所があるため、そこを社内でどう補うかまで含めて設計することが、派遣を活かす鍵になります。
BCC株式会社(IT営業アウトソーシングカンパニー)は、IT業界に特化した営業派遣サービスを提供しています。ご提案する人材はすべて自社採用のBCC社員で、独自開発の教育プログラム「LaPT」で営業スキルを習得したうえで現場に入ります。インサイドセールスの体制づくりについても、人材のご提案から受け入れ後のフォロー、法令対応まで一貫してサポート。「架電の担当者を増やしたい」「派遣で進める場合の準備を知りたい」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。