IT業界の営業人材が不足する理由と5つの対策|採用難時代の営業体制のつくり方

「エンジニアが足りない」という話はIT業界で聞かない日がありません。ところが実際に事業を回している立場からすると、困っているのはエンジニアだけではないはずです。営業の求人を出しても応募が集まらない。ようやく面接まで進んでも、IT商材の経験がある人はほとんどいない。結果として、いまいるメンバーに負荷が集中し、技術者が商談に駆り出される——そんな状態が常態化しているIT企業は少なくありません。
この記事では、IT業界の営業人材がなぜ不足するのかを構造から整理したうえで、企業が現実的に取れる5つの対策を解説します。営業責任者・事業責任者の方が「採用を待つ以外の選択肢」を持てる状態をゴールにしています。
IT業界の人材不足は「エンジニアだけ」ではない
まず前提となるデータから確認します。経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」(2019年3月、みずほ情報総研への委託調査)では、IT需要の伸びが高いシナリオの場合、2030年に最大で約79万人のIT人材が不足すると試算されています。
ここで注意したいのは、この試算が対象としているのはIT人材全般(IT企業やユーザー企業の情報システム部門などに従事する人材で、エンジニアが中心)だという点です。IT業界の「営業職」だけを切り出した公的な不足試算は、2026年7月時点で見当たりません。つまり「営業が79万人足りなくなる」わけではないことは、正確に押さえておく必要があります。
ただし、営業職の採用難が起きていないかというと、話は逆です。公的な統計で可視化されていないぶん、IT営業の人材不足はむしろ見過ごされやすい課題になっています。
構図はシンプルです。クラウド、SaaS、セキュリティ、通信——IT市場が拡大すれば、その分だけ「売る人」のポジションも増えます。ところがIT商材の営業経験者は、市場の拡大スピードに対して明らかに少ない。エンジニアの獲得競争と同じことが、規模は違えど営業職でも起きているのです。
IT業界の営業という仕事そのものの全体像は、別記事で詳しく解説しています(参考: IT業界の営業事務とは?仕事内容・一般事務との違い)。
IT営業の採用が難しい3つの構造的理由

「求人を出しているのに採れない」のは、採用担当の努力不足ではなく、IT営業という職種の構造によるところが大きいと考えられます。理由は大きく3つあります。
理由1: 「IT知識×営業力」というスキルの二重性
IT営業には、営業としての基礎力に加えて商材理解が求められます。ネットワークやサーバーといったインフラの基本がわからなければ、顧客の情報システム部門と会話が成立しません。SaaSであれば、機能の説明だけでなく顧客の業務フローに落とし込んだ提案が要ります。
この「二つのスキルを同時に満たす人材」は、そもそも母数が小さい。営業経験者は世の中に大勢いても、IT商材を扱った経験まで持つ人はその一部です。採用要件に「IT業界での法人営業経験」と書いた瞬間、候補者プールは一気に狭くなります。
なお、ひとくちにIT営業といっても、パートナー営業・アカウント営業・ルート営業など商流によって動き方はかなり違います(参考: IT営業の種類とは?)。要件定義の段階でどのタイプの営業が必要かを整理しておかないと、数少ない候補者とのミスマッチも起きやすくなります。
理由2: 経験者は少数の取り合いになっている
母数が小さい市場で各社が経験者を募集すれば、当然取り合いになります。待遇を引き上げられる大手やメガベンチャーに候補者が流れ、中堅・中小のIT企業には応募自体が届きにくい。「経験者を中途で採る」という一本足打法が機能しにくくなっているのが実情です。
理由3: 未経験者を自社で育てるには時間がかかる
では未経験者を採って育てればよいかというと、これも簡単ではありません。IT営業アウトソーシングを手がけるBCC株式会社は、自社のサービスページで「未経験者を採用しても、IT商材の理解や提案スキルの習得に半年〜1年かかる」という企業側の課題を挙げています(出典: BCC株式会社 営業派遣サービスページ https://www.e-bcc.co.jp/outsourcing/human-resources/ )。
半年から1年、戦力にならない期間の人件費を負担し続けるだけでも重いのですが、実際にはもうひとつ壁があります。教える側のリソースです。営業が足りないから採用しているのに、その足りない営業メンバーが新人のOJTを担当することになる。育成中はチームの生産性がむしろ下がる、という逆説が起きます。
営業人材の不足が事業に与える影響
営業の人手不足は「忙しい」で済む話ではなく、放置すると売上の機会損失として表面化します。典型的なのは次の3つです。
1つ目は、リード対応の漏れです。 マーケティング施策で問い合わせや資料請求を獲得しても、追いかける人がいなければ商談化しません。展示会で集めた名刺が放置される、Webからの問い合わせへの初回連絡が数日遅れる——競合が当日中に電話をかけていれば、それだけで負けます。
2つ目は、既存顧客フォローの劣化です。 IT商材はライセンス更新や保守契約の継続、利用拡大に伴うアップセルなど、契約後の接点が売上に直結します。新規対応に人手を取られて既存顧客への訪問が減れば、更新のタイミングで競合に切り替えられるリスクが静かに高まります。
3つ目が、技術者の営業兼務による疲弊です。 営業が足りない現場では、エンジニアやSEが商談に同席するだけでなく、提案活動そのものを担わされるケースがあります。開発工数は削られ、本人のモチベーションも下がる。しかも、技術に詳しいことと売れることは別問題です。
この点について、実際の企業の声があります。日本電気株式会社のデータストレージ部門は、営業体制の課題として「開発出身のメンバーが多く、お客様視点でわかりやすく伝える営業力が不足していた」ことを挙げています(出典: BCC株式会社 導入事例・NEC https://www.e-bcc.co.jp/case/NEC.html )。技術力のある組織ほど、「伝える」機能の不足が事業のボトルネックになり得るということです。
こうした影響は、採用が成功するまで待ってくれません。だからこそ、採用一辺倒ではない対策の組み合わせが必要になります。
対策①②: 採用の入り口を広げる——要件の見直しとポテンシャル採用
対策① 採用チャネルと要件を見直す
最初に着手すべきは、「IT業界での営業経験◯年以上」という要件そのものの見直しです。前述のとおり、この条件を満たす候補者は少数の取り合いになっています。
視野を広げると、隣接領域には候補者がいます。たとえば通信・OA機器・複合機など、法人向けに形のある商材を売ってきた営業。あるいはカスタマーサポートやヘルプデスク出身で、製品知識と顧客対応力を持つ人材。「IT営業の完成品」ではなく「IT営業になれる素地のある人」まで要件を広げれば、母数は大きく変わります。
対策② ポテンシャル採用と育成をセットで設計する
要件を広げるなら、受け入れ後の育成が前提になります。ここを場当たり的なOJT任せにすると、理由3で述べた「教える側の疲弊」に直行します。
商材知識・業界構造・提案の型を、誰が・いつまでに・どう教えるのかをプログラムとして決めておく。営業研修の設計方法は別記事で解説しているので、自社で育てる場合はあわせて参考にしてください(参考: 営業研修の種類と選び方|費用相場・外部委託で成果を出すポイント)。
ただし正直なところ、育成の仕組みを内製できるのは、教育に人を割ける余力がある組織です。営業3〜5人の部門で研修プログラムを整備するのは現実には難しく、その場合は後述する対策⑤(育成済み人材の外部活用)との組み合わせが現実解になります。
対策③④: 営業プロセスの分業と省力化——「人数」の前に「構造」を見直す
対策③ インサイドセールスとフィールドセールスの分業
人を増やす前に、いまの人数で商談量を増やせないかを検討する余地があります。代表的なのが、電話・メール・Web会議で見込み客を育てるインサイドセールスと、商談・クロージングを担うフィールドセールスの分業です。
一人の営業がリード発掘から受注、その後のフォローまで全部を抱える体制は、移動時間や事務作業に食われて商談時間が細ります。分業すれば、フィールド担当は確度の高い商談に集中でき、インサイド側は少人数でも大量のリードに接触できます。それぞれの役割の詳細は個別記事にまとめています(参考: IT業界のインサイドセールスとは?導入手順・体制づくり・外注との比較)(参考: IT業界のフィールドセールスとは?必要性・メリット・ポイントなどを解説)。
対策④ SFA・CRMによる省力化
もうひとつは、営業活動のうち「売ること以外」の時間を削ることです。SFA/CRMを整備して報告業務を簡素化する、メール配信やスコアリングでリードの掘り起こしを自動化する、議事録や提案書のドラフト作成に生成AIを使う。営業1人あたりの商談時間を1〜2割回復できれば、それは実質的な増員と同じ効果を持ちます。
分業も省力化も、効果が出るまでに一定の設計期間が要ります。「構造は直すが、それでも人が足りない」場合に検討するのが次の対策です。
対策⑤: 外部の営業人材を活用する——営業派遣という選択肢
採用でも内製育成でもない第三の選択肢が、外部人材の活用です。なかでも営業派遣は、IT業界の営業人材不足と相性のよい仕組みです。
営業派遣では、派遣会社に雇用された営業人材が自社に常駐し、自社の指揮命令のもとで働きます。ここが重要なポイントで、売り方・トークスクリプト・優先順位を自社でコントロールでき、日々の活動が社内から見えるため、営業ノウハウや顧客情報が社外に流出しにくい構造になっています。自社の営業チームの一員として動いてもらいながら、採用リードタイムと初期教育の負担を外部化できるわけです。
なお、外部活用には営業活動を成果ごと委託する方法(いわゆる営業代行)もあり、指揮命令の所在や契約形態が派遣とは大きく異なります。委託型でIT業界に強い会社を選ぶ観点は別記事があります(参考: IT営業代行とは?費用相場・会社の選び方・SaaS/SI向けの比較ポイント)。
費用面は、人材のレベルや派遣会社の教育体制によって幅があるため、この記事では詳細に立ち入りません。
IT業界で営業派遣を活用する際のポイント

営業派遣を選択肢に入れる場合、IT業界ならではの確認ポイントが2つあります。
ポイント1: IT商材を理解できる人材を提案できる会社か
総合型の派遣会社は登録者数こそ多いものの、「IT商材の商談に入れる営業人材」となると層が薄いことがあります。派遣会社自身がIT業界をどれだけ理解しているかは、提案される人材の質に直結します。
たとえばBCC株式会社(IT営業アウトソーシングカンパニー)は、「人材会社」ではなく「IT企業」であることを強みとして、IT企業の営業支援に特化した営業派遣を提供しています(出典: https://www.e-bcc.co.jp/outsourcing/human-resources/ )。株式会社インターネットイニシアティブ、日本電気株式会社をはじめとする大手IT企業での導入実績が公開されており、パートナー営業・インサイドセールス・フィールドセールス・ルート営業・アカウント営業・営業事務まで、IT営業の職種を横断してカバーしています。派遣会社を比較する際の選定基準は別記事で整理しています(参考: 営業派遣会社の選び方|企業側が確認すべき7つの選定基準)。
ポイント2: 人材をどう育てているか(教育体制)
もうひとつの確認ポイントは、派遣される人材がどんな教育を受けているかです。経験者の頭数がそもそも少ない以上、「未経験人材をどう育てて送り出しているか」が派遣会社の実力差になります。
BCCの場合、派遣スタッフは全員が自社採用の正社員で、IT業界・営業の未経験者が8割以上を占めます。その人材を、独自開発の「BCC-LaPTプログラム」——2ヶ月間、営業基礎やITインフラの基礎知識といった座学と、同行営業からの実践を組み合わせた研修——で育成してから現場に送り出す方式です(出典: https://www.e-bcc.co.jp/outsourcing/lapt-program/ )。こうした育成型派遣の仕組みは、別記事で詳しく解説しています(参考: 育成型派遣とは?未経験人材を研修してから派遣する仕組み)。
実例: 日本電気株式会社が13年以上、営業派遣で「開発と顧客の橋渡し役」を確保
実際にIT業界で営業派遣が長期的に機能している例として、日本電気株式会社の事例を紹介します(出典: BCC株式会社 導入事例・NEC https://www.e-bcc.co.jp/case/NEC.html )。
日本電気株式会社のインフラ・テクノロジーサービス事業部門データストレージ統括部は、ストレージ製品「iStorage HSシリーズ」の営業強化のため、約13〜14年前からBCCの営業派遣を活用しています。前述のとおり、開発出身のメンバーが多く「お客様視点でわかりやすく伝える」営業力の不足が課題でした。
2名からスタートした派遣スタッフは、開発者と顧客の間に立つ「橋渡し的な存在」として機能し、自発的に案件を発掘して大型ソリューション案件の獲得にも貢献。マーケティングチームへ人材が転出した実績もあり、現在も複数名の体制が続いています。同社のディレクターは「BCCの営業担当者は社員と同じくらい自社商品である『iStorage』を愛してくれていました」と評価しています。
外部人材が10年以上にわたって製品営業の一角を担い続けているこの事例は、「営業派遣=一時的な欠員補充」というイメージとは異なる、営業体制の恒常的な一部としての使い方を示しています。技術力はあるが「伝える」機能が足りない——そんなIT企業にとって、参考になるモデルではないでしょうか。
まとめ: 採用を待つ間に、営業体制は選択肢を組み合わせて守る
IT業界の営業人材不足は、「IT知識×営業力」という要件の二重性、経験者の取り合い、自社育成に半年〜1年かかるという構造が重なって生じています。公的な不足試算(経産省の2030年最大79万人)はエンジニア中心のIT人材全般の数字ですが、営業職の採用難はデータに現れにくいぶん、対策が後手に回りがちです。
本記事で挙げた5つの対策をあらためて整理します。
- 採用チャネルと要件の見直し — 経験者一本足打法をやめ、隣接領域まで母数を広げる
- ポテンシャル採用と育成のセット設計 — OJT任せにせず、教える仕組みを決めてから採る
- インサイド/フィールドの分業 — いまの人数で商談量を増やす構造をつくる
- SFA・ツールによる省力化 — 「売ること以外」の時間を削って商談時間を回復する
- 外部の営業人材の活用 — 営業派遣で採用リードタイムと初期教育を外部化する
どれか一つで解決する性質の問題ではありません。自社の状況——採用力、育成の余力、商材の複雑さ——に合わせて組み合わせることが、採用難時代の営業体制のつくり方です。
よくある質問
Q. 未経験の派遣人材に、本当にIT営業が務まるのでしょうか?
A. 配属直後から一人で複雑な提案を完結できるわけではありませんが、営業基礎とITの基礎知識を研修で身につけた状態で現場に入るため、自社でゼロから教える場合と比べて立ち上がりに大きな差が出ます。派遣会社の教育体制の見極め方を含め、育成型派遣の記事で詳しく解説しています(参考: 育成型派遣とは?未経験人材を研修してから派遣する仕組み)。
Q. 依頼してからどれくらいで来てもらえますか?
A. BCCの場合、人材のご提案までは最短3営業日です(出典: https://www.e-bcc.co.jp/outsourcing/human-resources/ )。実際の就業開始までは、派遣契約の締結状況や業務内容によって数日〜2週間程度が目安とされています(出典: https://www.e-bcc.co.jp/faq/outsourcing/days-possible/ )。「提案まで」と「就業開始まで」は別のリードタイムなので、スケジュールを組む際は分けて確認してください。
Q. 東京・大阪以外の拠点でも利用できますか?
A. BCCの営業派遣の対応エリアは主に東京と大阪です。その他の地域については個別相談が可能とされています(出典: https://www.e-bcc.co.jp/faq/outsourcing/area/ )。
BCC株式会社(IT営業アウトソーシングカンパニー)は、IT業界に特化した営業派遣サービスを提供しています。 ご提案する人材はすべて自社採用のBCC社員で、独自開発の「BCC-LaPTプログラム」で営業スキルを習得したうえで現場に入ります。 人材のご提案から受け入れ後のフォロー、法令対応まで一貫してサポート。 「営業の人手を増やしたい」「まずは進め方を知りたい」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。