ゼロトラストは、ネットワークセキュリティのアプローチであり、従来のネットワークセキュリティモデルの「信頼する」前提を捨て、「信頼しない」原則に基づいています。ゼロトラストでは、ネットワーク内のすべてのリソースやユーザーは潜在的に危険であると見なされ、認証、認可、セグメンテーション、暗号化などのセキュリティメカニズムを厳格に適用することで、セキュリティを確保します。
例えば、ある企業が従業員に対してモバイルデバイスを配布しています。従業員はそのデバイスを使用して企業のネットワークにアクセスし、業務を行います。従来のセキュリティモデルでは、ネットワーク内にいる従業員は信頼され、ネットワークへのアクセスが許可されることが前提とされています。
しかし、ゼロトラストのアプローチでは、従業員のデバイスが潜在的なセキュリティリスクを持つ可能性があるため、単にネットワークに接続されたことで信頼されるわけではありません。ゼロトラストでは、従業員のデバイスに対して認証と認可のプロセスを導入します。
具体的には、従業員がデバイスにログインするときには、ユーザー名とパスワードの認証だけでなく、デバイスのセキュリティステータス(最新のパッチが適用されているか、ウイルス対策ソフトウェアがインストールされているかなど)もチェックされます。さらに、デバイスが企業のポリシーに準拠していることを確認するため、セキュリティポリシーの適用やエンドポイント保護ソフトウェアのインストール状況などもチェックされます。
このように、ゼロトラストでは認証と認可がデバイスとユーザーの両方に適用され、ネットワーク内のすべてのトラフィックが厳密に監視されます。例えば、従業員が特定のアプリケーションにアクセスする際も、アプリケーションへのアクセス権限が従業員の役割や業務に基づいて厳密に制御されます。
また、セグメンテーションもゼロトラストの重要な要素です。ネットワーク内のリソースやシステムを小さなセグメントに分割し、各セグメント間の通信を厳密に制限します。これにより、攻撃者がネットワーク内に侵入した場合でも、セグメントごとの制限によって被害を最小限に抑えることができます。攻撃者が1つのセグメントに侵入しても、他のセグメントへのアクセスは制限されるため、ネットワーク全体への拡散を防ぐことができます。
さらに、ゼロトラストではユーザーとリソースのアクセスを継続的に監視し、不審な行動や異常なトラフィックの検知を行います。これにより、早期に攻撃や侵害を検知し、迅速な対応が可能となります。
ゼロトラストのアプローチは、従来のネットワークセキュリティモデルよりも堅牢であり、内部と外部の境界線を超えた攻撃に対してより強力な防御を提供します。また、モバイルデバイスやクラウド環境の普及に伴い、従業員やリソースがネットワーク外からアクセスするケースが増えてきたため、ゼロトラストの重要性が高まっています。
要するに、ゼロトラストは「信頼しない」原則に基づき、ネットワーク内のすべてのリソースやユーザーに対して厳格な認証と認可を要求し、セグメンテーションや監視などのセキュリティメカニズムを組み合わせてセキュリティを確保するアプローチです。これにより、ネットワーク内の攻撃や侵害からの保護を向上させることができます。